情報をラベリングする

ここ数日紹介していたCDCのレポート「Crisis Emergency Risk Communication(CERC)」には、情報提供者は、情報を分けて発信することの重要性が述べられています。

例えば、「被災地にいる人向け」、「直接的な被災を受けていない人向け」などのように、情報の受け手に応じて情報を分ける必要があるわけです。

そうしないと、昨日紹介した’Armchair Victims’など被災地から距離的にも離れた物理的に直接の被害を受けていない人などにも被害者を発生させることがあるからです。

しかしながら、現在のマスメディアの情報を見てみると、そのような対象者毎に情報が明確に分かれているということはなく、渾然一体となって情報が流れていることが分かると思います。

このことによって、被災地にいる方が今必要な情報を得にくくなっているだけでなく、心理的なダメージを深刻化することに繋がっていたり、’Armchair Victims’による事態の回復が遅くなるような行動に繋がっていたりすることがあります。

本来であれば、マスメディア側が情報提供時に情報を明確に区分することが必要ですが、現時点でそうなっていない中、それらの情報に接する人はどうすればよいのでしょうか。

例えば、現在発信されている情報の中には、過去・現在・未来というような時間軸でみると、それらが混在していることが分かると思います。

  • 今までの地震発生時の揺れている映像などは「過去」です(これは被災者のトラウマ化を進め、非被災者を’Armchair Victims’とする原因となるため、現時点で一緒に流すべき情報ではない)。
  • ライフライン・交通網・天候・支援が受けられる場所などの現時点での状況などは「現在」です。
  • ライフライン・交通網の復旧見通し、天気予報などの情報は「未来」です。

こういった時間軸が異なる情報が混在して流されていることにより、混乱を招いたり、心理的な負担を重くしていることがあります。

本当は「過去チャンネル」「現在(今)チャンネル」「未来チャンネル」のように、情報提供者側が情報をチャンネル毎に分けて発信してくれれば良いと考えます(Crisisの種類によっては、現在と未来の情報チャンネルは一緒でも良いと思いますが、過去は分けるべきだと思います)。

CDCの提唱するCERCでいうと、「現在(今)チャンネル」にはCrisis Communication(直ぐに伝える必要がある情報)、「未来チャンネル」にはRisk Communication(今後のリスクに関する情報)が含まれると考えられます。

しかし、現時点でそうなっていない以上、情報の受け手としては、受け取る情報に対して、ラベルを貼り付けることが重要となってきます。

それは、受け取る情報一つひとつに対して、「過去」「現在」「未来」「被災地(者)対象」「非被災地(者)対象」「無関係」のようにラベリングをしていくのです。

そのように情報にラベリングをしていくことによって、視点が上がり(前頭前野を使うことによって抽象度が上がり)、渾然一体となった情報に接することによって不安や恐怖などの情動優位となっている状態を緩和することができます。

 


【参考資料】

・CDCのレポートは、CDCのHPのEmergency Preparedness and Response―CERC Basicの中にあります。 http://emergency.cdc.gov/cerc/resources/index.asp

・『CRISIS EMERGENCY RISK COMMUNICATION 2014 EDITION』CDC

http://www.bt.cdc.gov/cerc/resources/pdf/cerc_2014edition.pdf

(約425頁・12MBありますので、ダウンロードに多少時間が掛かかります)

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