それは看板です

天気が良かったので、景色が一望できる丘の上にある見晴らしのよい広い食堂に行きました。

その食堂には数年前にも行ったことがあり、入り口付近にメニューの立て看板とその隣に券売機があったことを覚えていました。

メニューの看板で食べるものを決め、食券を買おうとしたところ、券売機であろう四角い箱全体にカバーが掛かっていました。

食券が買えないため、食堂の中に入り店員さんを見つけ、券売機が見当たらないこととどうやって注文すれば良いかを聞きました。

すると、店員さんは「入り口に券売機があるので食券を買ってきて下さい」と答えました。

「??」と言葉にならない私。

 

券売機を見落としたかなと思い、再度入り口に行きましたが、やはりメニューの看板とカバーで覆われた四角い箱らしきものしかありません。

周りを十分に探しましたが、やはり食券が買える券売機を見つけられません。

そこで再度店員さんの所まで行き、「券売機がありません」と告げました。

店員さんは怪訝そうな顔をしながら入り口まで行き、メニューの立て看板を指差して「ほら、あるでしょ。ここで食券を買って下さい」と言いながら忙しそうにお店の中に戻って行きました。

「???」

 

私は唖然としながら、その指差された看板をしげしげと見つめました。

あまりに店員さんが確信して言うものだから、私がおかしいのだろうかとか、スコトーマになり見落としているものがあるのだろうかとも思ってしまいましたが、どうやっても看板でしかありません。

目の前の食べ物のリストが書かれた金属板には、もちろんお金を入れるところなんかありませんし、メニューを選ぶボタンも、食券が出される開口部もありません。

 

もう一度、店員さんの所まで行き「券売機がありません」と告げると、忙しくて迷惑そうにしている店員さんを再度入り口まで連れて行きました。

「あら、やだ。券売機が使えないじゃない。店長がカバーを掛けてしまったのだわ。私もさっき来たばかりだから気づかなかったわ」と店員さんは恥ずかしそうに言いました。

「いつもは券売機がありますものね」と私。

 

店長さんが券売機にカバーを掛けてしまった理由は分かりませんが、店員さんはいつもそこに券売機があるものだから、今この瞬間も券売機が使えると信じて疑っていなかったのだと思います。

「券売機が入口にあり、今も使用できる」という店員さんにとっての真実(thruth)は、店員さんが見えるものさえも変えてしまったのでしょう。

なにせメニューの立看板を指差して券売機と言ったぐらいですから、店員さんには本当にそれが券売機に見えていて、その通りに振る舞ったのでしょう。

 

この店員さんの行動を見ていたら、コーチングの最も重要なプリンシプルの1つである

「人間は、本当の真実て?はなく、自分か?真実た?と考えていることに基つ?いて行動している」

というものを思い出しました。

私はそのプリンシプルを知っているので、店員さんのこのような行動に対して腹を立てることはありません。

むしろマインドって面白いなぁ、怖いなぁと思いながら、マインドの仕組みについて理解を深める良い経験ができたなぁと感じました。

コーチングを学び、マインドの仕組みを知ることの利点の一つは、他人の振る舞いについて、それがマインドの仕組みだと理解できて、めったなことでは腹を立てることがなくなることかもしれませんね。

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