208,608,320,288,592,224 これらは何の数字であるか分かりますか?
「偶数!」正解です。
「4の倍数!」正解です。
「16の倍数!」正解です。
他にも正解はあるでしょう。
実はこれらの数字は、手元にあった本をランダムに取り上げて、総ページ数を数えたものです。
本の総ページ数は、8ページ又は16ページを基本に作られるのを知っていましたか?
私はこれまで沢山の本を読んできましたが、自分がテキスト製作をするようになる最近まで知りませんでした。
試しに近くの本を手にとって総ページ数を数えてみてください(表紙は除きます)。
16の倍数になっていませんか?
中には16ではなく、8の倍数になっているものもあるかもしれません。
文庫本を手にとってみましょう。それは32の倍数になっているはずです。
手元にドストエフスキーの「罪と罰 下」の文庫本がありましたので数えてみたところ、608ページと32の倍数でした。
なぜ、8や16や32の倍数になっているかというと、それは製本の効率化を図り製作コストを下げるためです。
本のページ印刷は1ページ、1ページと印刷しているわけではなく、大きな紙一面に4ページや8ページ、文庫本のような小さいものだと16ページをいっぺんに印刷してしまいます。
更に、紙の両面に印刷するので、4×2=8頁、8×2=16頁、16×2=32頁が、一枚の大きな紙に印刷されます。
その印刷された大きな紙を折って、裁断して、一ブロック(一折り)ができます。
(詳しくは「本のページ数どうやって決まる?(OKIデータ)」に分かりやすく解説されているので参照下さい)
本の最後には、その出版社から出されている他の書籍の紹介や宣伝が掲載されているのを見かけると思いますが、ここに掲載される分量は、総ページ数が16(8)倍数になるためのページ数の調整によって決まります。
本文が16(8)頁の倍数ではない場合、白紙の頁を残したまま印刷するのはもったいない(白紙のページが最後に続くのはおかしい)ので、白紙の頁に宣伝などをいれて16(8)の倍数になるように総ページ数を調整をしています(大量に印刷する場合は、その白紙に印刷するコストは全体から見れば僅かでしょう)。
更に、一折16ページという印刷を前提にした場合、208ページ分の原稿は16の倍数ですから問題ありませんが、209頁分の原稿は「内容1ページ+白紙15ページ」になってしまうので、その1ページを削るために内容を編集させることもあるでしょう(もちろん調整の方法はそれだけではなく文字の大きさや行間などによってもできると思いますが、ここでは単純化しています)。
208ページと224ページとの差16ページは原稿を書く著者の側としてはだいぶ負担が違いますが、印刷する際の制約によっても、内容の方も変更を余儀なくされることがあるのだと思います。
出版業界の人にとって、この8,16,32の倍数という総ページ数は常識なのでしょうが、私には製作に携わるまでは全くその常識を持っていませんでした。
きっと、出版業界同士の人達は、その規則は(今更言うことでもない)暗黙の了解事項であり、無意識にそれが前提となって本作りをしているのだと思います。
言い換えると、その8,16,32の倍数ページというのが出版業界の人達の一つの見えないフレームであるわけです。
印刷や製本の機械もその規則に合うように作られているはずです。
私もその規則を知ってしまったがために、これから本やテキストなど製作に携わる時は、そのフレームに無意識に縛られるでしょう。
そういった意味では、このTAJIMA+はそのようなフレームには縛られていないのでページ数を気にすることなく自由に書くことができます。
また、電子書籍もそのような制約は受けないでしょう。
紙の本では、必ず紙の両面があるので総ページ数が偶数となりますが(裏面が白紙であっても1頁とカウント)、電子書籍では紙の裏面という概念が無いので総ページ数が奇数といったことも可能です。
更に印刷コストに制約を受けないので、印刷コスト側から受ける制約も考慮しなくてすみます。
でもそこには電子書籍であるからこその(紙の本ではなかった)規則、フレームもまたあるのだと思います。
どのような形態であれ、そこには(暗黙の)規則、フレームがあり、それが私たちを制限しています(時にはその規則、フレームが可能性を引き出すこともありますが)。
本を手にしたら、ページ数を確認して、そのことを思い出し、自分が束縛されている規則、フレームは何かを考えてみるといいでしょう。
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