花を活けていたアンティークの花瓶が割れました。花瓶の大きさに比べて大きな花を挿していていたために重心が高くなっており、ちょっと触れた時に転倒して割れてしまいました。
割ってしまったスタッフは大きなショックを受けていましたが、綺麗に割れていたので接着剤で繋げばいいんじゃないと言いました。
その時、修理の得意な別のスタッフが面白いことを教えてくれました。
それは「金継ぎ(金繕い)」という、割れたり、欠けたり、ヒビが入ってしまった陶磁器を漆で接着して、接着部分を金で装飾して仕上げる日本古来の修理方法があるというのです。
「金継ぎ」は、欠けやヒビなども偶然に作り出されたひとつの美しさと考える日本的な美意識があることから生まれた修理方法のようです。
漆で接着すると継いだ部分に黒い漆の跡が残るので、それを隠すために金粉や銀分を使い、割れた部分に新たな美を作り出りだし、前とは違った形でそれを味わい楽しむというのです。
一方で、西洋では、修理というと一般的に原状回復が基本となるため、いかにその欠けやヒビを目立たないように修復するかというのが基本となるそうです。
私自身もそれまで無意識に原状回復で直すことを考えていました。
どちらの修理方法が優れているのか、良いのかというのではなく、価値観や文化の違いによって修理の仕方も変わってくるというのは面白いなと感じました。
早速、「金継ぎ」について興味を持ったので調べてみたところ、今まで知らなかった戦国時代の逸話や茶の湯の文化などの情報も知ることができました。
次に博物館で古い茶道具を見るときは、「金継ぎ」がされているか、またその技術や「金継ぎ」織りなす美しさにも目が行くことでしょう。
花瓶が割れてしまったことで、スコトーマが外れ、私自身の新たな世界が広がったようです。
この花瓶は、是非とも「金継ぎ」で直してみて、新しく生まれた美を楽しんでみたいと思います。