NAT KING COLE/L-O-V-E
村上春樹さんは、ナット・キング・コールが歌った「国境の南(South of the Border)」を聞いた覚えがあるという記憶を元に、「国境の南、太陽の西」という小説を書きました。
「ナット・キング・コールが『国境の南』を歌っているのが遠くから聞こえた。・・・その曲を聞くたびにいつも、国境の南にはいったい何があるんだろうと思った。」(「国境の南、太陽の西」より)
でも、後になって、ナット・キング・コールは「国境の南」を歌っていないという指摘を受け、調べてみたところ、村上さんも驚いたことに本当に歌っていなかったそうです。
現実には存在していないものをもとにして、一冊の本を書いてしまったです。でもそれはそれでいいのでしょうね。小説はそもそもどこにもない世界を書いているものだから。
(ちなみに、村上さんは20代の頃、国分寺でジャズ喫茶「ピーターキャット」を開き、千駄ヶ谷に移転後しばらくして小説家としてデビューしています。ジャズのLPレコードを1万枚以上持っている蒐集家でもあります)