事務所で仕事をしている時は、たいていジャズかクラッシックを流しています。最近はジャズが多いかもしれません。
ジャズと一言にいっても、多種多様なジャンルやミュージシャンがいて、ジャズ・アルバムも山のようにあるので、どこからジャズに入っていけばいいのか分かりづらいものです。
有名なジャズ・アーティストのアルバムをいくつか買って聴いていても、ジャズが分かったような分からないような感じを受けるでしょう。
それは、ジャズというものがあまりに広範なために全体像が掴みにくいからかもしれません。
そういった時に適切にガイドできる方を見つけることができれば、全体像が把握できて、かつその奥深さや魅力といったことを素早く知ることができるでしょう。
『一生モノのジャズ名盤500』という本は、まさにそのようなジャズに入っていく人達の適切なガイド役になってくれるものだと感じました。
この本は、1967年、東京・四谷にジャズ喫茶「いーぐる」を開店したオーナー後藤雅洋さんが書かれたものです。
40年以上、毎日のようにジャズ・アルバムを長時間大量に聴き続けてきた後藤さんだからこその切り口で、入門者が入り口を間違えないように、そして迷子にならないようにしながら、ジャズの全体像や魅力が分かるように工夫された本作りになっています。
多くのジャズのガイド書は、「クールジャズ」や「モードジャズ」のような歴史的なジャズスタイル別で分類されているか、ミュージシャン別に分類されているものが多いものです。
この本が他と一線を画しているのは、そういった従来からよく見られる分類ではなく、「聴いた感じ」別に18のグループに分類されていることです。
例えば、あるジャズ・アルバムが気に入ったとすると、たいていはそのミュージシャンの他のアルバムを買ってみることが多いと思います。
でも、そのミュージシャンの他のアルバムはちょっと好みと違うな、と思うことがあるはずです。
この本では、歴史的なスタイルとかミュージシャンという枠に囚われずに、「聴いた感じ」別にジャズ・アルバムが分類されているので、「聴いた感じ」が気に入った名盤と同じような他のアルバムを教えてくれます。
18グループそれぞれの代表的なアルバムを聴いてみて全体像を掴みつつ、自分の「聴いた感じ」の好みが分かれば、そこからジャズの奥深くに入っていける作りになっています。
この本の作り方(各章のゲシュタルト、本全体のゲシュタルトの作り方)は、他のジャズガイド本にはない面白さを感じました。
さすが長年、仕事柄、大量にジャズアルバムを聴き続け、更にジャズ喫茶に来るお客さまを楽しませるために工夫し続てきているからこその視点だなと思いました。
更にジャズ耳の作り方などの解説もあり、あるジャンルの知識を習得していくことに必要なヒントもこの本から読み取ることができるでしょう。
後藤さんが本の中で書かれていましたが、たいてい途中でジャズが嫌いになったり、離れてしまったりする方は、入り口や聴き方を間違えてしまうからだそうです。
それは適切にガイドしてくれる方を見つけられなかったからかもしれません。
コーチングも本格的に理解しようと思うと、今まで知らなかった広範な知識を学ぶ必要があるため、それを適切にガイドできる人が必要です。
コーチングというもののガイド役、それもコーチの役割の一つといっていいでしょう。