縄でぐるぐる巻きにされた謎の物体Xを戴きました。外見からは一体何者なのか想像がつきません。鼻を近づけてみると藁の良い香りがしました。どうやら食べ物のようなのですが、果たして中に何が入っているのか見当がつきません。
藁だからと、記憶を頼りに「納豆かな?」という人もいました。
私達は何かを判断する時は記憶を頼りに対象を認識しようとします。
(今回の物体Xは記憶には無いので何物かは認識できませんでした)
でも、こうやって中身が隠されていて何か分からない状態は好奇心をくすぐられますね。
さて、その正体を突き止めるべく、ぐるぐる巻きの藁を解いてみました。
ぐるぐる巻きを解いて、藁を広げると、竹の皮がで包まれているモノが顔を出しました。
まだ何だか分かりません。
かなり思わせぶりなものですね。
ますます好奇心がくすぐられます。
竹の皮を剥ぐと、ようやく食べ物らしきものが見えてきました。
どうやら柿のようです。
それも、その見た目から(記憶を頼りに)判断すると干し柿でしょうか。
柿らしきものに包丁を入れて真っ二つに切ってみました。
中から柿太郎は出てきませんでした。
代わりに、まるで牡丹かバラの花が咲いたような綺麗な模様が見えました。
なんで柿なのに中がこんな模様になっているのでしょうか??
更に謎は深まります。
更に切り進め、輪切りにしてみると、たくさんの牡丹の花が咲いたようになりました。
一体これは何なんでしょうか?
食べてみると、柿の甘さがギュッと凝縮されて、それでいてしつこくない上品な甘さが口に広がりました。
食べたことのない柿の味で驚きました。
この謎の物体Xは、「巻柿」という熊本県山都町に伝わる伝統的な特産品だそうです(他の地域にもあるのかもしれませんが)。
収穫した柿を、吊るし干して、その後に実を手で開いて形を整えながら何枚にも巻いて重ねてを繰り返してつくられるそうです。
なんと、この巻柿は13個もの矢部牡丹という柿を重ね巻きして作られているそうです。
どうりで美しい牡丹の花のような模様になり、そして甘みが凝縮しているはずです。
この年輪や微妙な味加減は昔ながらの熟練した職人技が要求されるそうですが、現在ではそれを継承する人がほとんどいない貴重な芸術作品といえます。
たぶん干し柿という保存食から昇華させてこのような芸術の域にまで達したのだと思うのですが、柿を巻いて牡丹の模様にし、更に藁でも巻きあげ芸術作品にしてしまうなんて、人間の持つイマジネーションは凄いなと改めて感じさてくれた巻柿でした。
巻き柿「矢部牡丹」
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