昨日は日本語の結合語を集めた『てにをは辞典』を紹介しました。日本語の結合語の辞典はほとんどありませんが、英語にはしっかりとした’Collocations Dictionary’というのが沢山あります(日本語には助詞があるために作るのが難しいのだと思います)。
‘Collocations Dictionary’を見てみると、ある単語がどのような動詞や名詞や形容詞などと結びついて使われるのが分かり、その元の単語をより深く理解することができます。
特に私は英語ネイティブではないので、ある単語が何と結びついて使われるのかの用例を知っていた方が、単なる単語の定義だけを知っているより本来の意味を理解できるような気がします。
このことは書いてみると当り前のように感じられるかもしれませんが、意外にスコトーマ(盲点)になっている点かもしれないと感じました。
コーチング(Coaching)は英語圏発祥なので、コーチングに出てくる用語(概念)も英語です。
それをカタカナにしたり日本語に置き換えたりして私達は使っていますが、元はそもそも英語であることを忘れてはいけないと思います(日本語には元々無い概念ばかりです)。
例えば、コンフォート・ゾーン(Comfort Zone)というコーチング用語があります。
コンフォート・ゾーンとは、「自分にとって快適で居心地の良い空間、人が緊張や不安を感じることなく自然に行動できる限定された範囲、自分にとって慣れ親しんだもの」といった意味で使われ、コンフォート・ゾーンがその人のパフォーマンスのレベルを決めるため、コーチングでは非常に重要な概念です。
そして、私たちコーチが日本語でコンフォート・ゾーンという用語を使う時は、
「コンフォート・ゾーンを上げる」
「コンフォート・ゾーンを広げる」
「ゴールのコンフォート・ゾーン」
「現状のコンフォート・ゾーン」
「臨場感の高いコンフォート・ゾーンが選ばれる」
「コンフォート・ゾーンが高い(低い)」
「広い(狭い)コンフォート・ゾーン」
などという表現を使います(これがコンフォート・ゾーンの結合語の例です)。
コーチングを学び始めた方たちから、良く出てくる質問として、
『コンフォート・ゾーンは「上げる」ものですか、それとも「広げる」ものですか』
というものがあります(ここではその解説を省略します)。
私は、セルフコーチングプログラムであるTPIEのファシリテーターになる訓練を受けている頃に、ファシリテーターの仲間達がこの「広げる」「上げる」議論をしているのを聞いて、自分自身であることをやりました。
それは、TPIEプログラムの創始者であるルー・タイスが’Comfort Zone’という言葉を、どのような単語と組み合わせて使っているかを徹底的に調べたことです。
TPIEプログラムには、ルー・タイスの講義のスクリプトが英語でついているので、そのスクリプト集に出ている全ての’Comfort Zone’という単語にマークをして、どんな他の用語と組み合わせて説明しているのか、つまりコロケーション(Collocation)をつぶさに見てみたのです。
その結果、ルー・タイスは’Comfort Zone’をどのようなものだと考えていているのかについて、そして’Comfort Zone’という概念そのものの理解を深めることができました。
たぶんその時仲間内でこんなことをしていたのは私ぐらいだったかもしれません。
ルー・タイスの著作のいくつかは日本語版も出ていますが、コーチとして更にコーチングを理解されたい方は英語で書かれている原著にも目を通してみるといいでしょう。
まずは全て通しで読むことができなくても、コーチング用語の一つをターゲットにしてコロケーションを拾って(書き出して)いくのも勉強になるはずです。
それをしっかりやると今まで日本語だけで学んでいたコーチングとはまた違ったコーチングの世界を見ることができるでしょう。