『マインドの教科書』の構成の都合上掲載できなかった「コラム」と「エピソード」の原稿があります。そちらを順次掲載していきたいと思います。『マインドの教科書』と共にお読みくださればと思います。
以下に掲載するのは、その中の3つ目のエピソードです。
エピソード「もっとマインドの使い方が上手になりたい」
私がルー・タイスから直接指導を受けていたのは、ルーが2012年4月に亡くなるまでの晩年の数年間でした。
はじめてお会いした2009年の時点で、TPI(The Pacific Institute)という教育機関を米国シアトルに1971年に設立してから既に40年近く経っていました。40年の間にルーの教育プログラムは全世界で展開され、教育者としてもビジネスパーソンとしても圧倒的な成果を上げていました。また、ルー自身もトップコーチとして、多くの人々を成功に導き、輝かしい実績を残していました。
数々の凄い結果を残してきたルーは、はじめてお会いした時の私にとって雲の上のような存在でしたし、誰よりもマインドの使い方が上手な人なのであろうなと感じていました。実際に、ルー自身が教えているコーチングの方法論を誰よりも自らが実践して、マインドの使い方が圧倒的に上手であったのだと思います。
そのことは、ルーから発せられる言葉一つひとつ、教えている時の立ち振舞いなど、あらゆる場面で言語・非言語で伝わってきました。
そのようなルーの姿を見て、私もルーのようにマインドの使い方が上手になりたいと、ルーをロールモデルとして、少しでも近づけるようにと学びと実践を深めていきました。
そして、ある時、ルーから話を聞いているときに、彼がボソッと言った言葉が耳に残り、それが自身のコーチとしての指針ともなりました。
その言葉は「もっとマインドの使い方が上手になりたい」というものでした。前後の文脈はもう覚えていないのですが、その言葉だけが何度も私の中で反芻されました。
圧倒的な成果を残してきて、誰よりもマインドの使い方が上手であると思われたルーが「もっとマインドの使い方が上手になりたい」と言ったのです。
ルーのゴールはとてつもなく大きなものであったはずです。世界中の人々を幸せにするようなゴールであったでしょう。でもまだそのゴールは実現されていない。
自分がもっとマインドの使い方が上手になれば、そのゴールの実現にもっと近づけるという思いもあったでしょうし、他の人の持つゴールを実現するためのサポートももっと上手にできるという思いもあったのでしょう。
だからこそそのような言葉が出たのだと思います。
コーチになることを目指していた私は、その姿勢こそがコーチとして必要な資質なのだろうと感じました。
コーチとは人の成長の手助けをする役割を担っています。そして、人の成長を手助けする人に何よりも必要なことは、どんな知識や技術を持っているかという以前に、自分自身が成長しようという意欲を持ちそれを実践しようとすることなのだと、そのルーの言葉から気付かされました。
もし、コーチ自身が、過去の実績・成功だけに頼ってコーチングをしたとしても、はじめはある程度の手助けができるかもしれません。
しかし、どこかの時点でクライアントの成長を手助けするどころか、ブレーキになってしまう可能性があります。それこそがコーチとして一番避けなければいけないことです。
自身の無限の可能性を信じ、より上手なマインドの使い方ができるように、コーチ自身が成長し続ける意欲と姿勢を維持すること、それがコーチに求められる重要な資質であることを、このルーの一言から学ぶことができました。
『マインドの教科書』
田島大輔著
苫米地英人監修
開拓社
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