専門家のスコトマ

昨日続きです。電気の契約容量を増やすため、電力会社に分電盤内にあるサービスブレーカー(電流制限器)の取替工事を依頼しました。そして工事が終わってみると、サービスブレーカー自体が無くなっていました。

新しいサービスブレーカーがそこにあるものだとばかり思っていた私は、一瞬何が起きたのか分からず、工事が不調に終わったのかとすら思いました。

 

その時の私の信念(Belief)は「電気の契約容量変更⇒サービスブレーカー取替」であったといえます。

自分の信念以外のものは、スコトマ(心理的盲点)となって見えません。

私たちはいつも自分の持っている信念の正しさを証明するための情報ばかりを集めており、その信念に反することが起きると戸惑ったり、反発したり、否定したりします。

 

私は以前、電力会社に勤めており、入社したての頃は現場に配属され、このサービスブレーカーの取替工事も沢山やった経験があります。

ちなみに、サービスブレーカーというのは社内用語で、通常SB(エスビー)と呼ばれていました。一般的にはアンペアブレーカーと呼ばれています。サービスブレーカーと呼ぶ時点で、この人は電力関係の人かと思われるかもしれません。

もう20年近く前のことになりますが、今でもサービスブレーカーの種類と色をそらんじることもできますし、ドライバーさえあればその取替工事もできます。

そういった意味では、一般的な電気需要家に比べれば、私はその専門家(だった)といえるでしょう。

でも専門家である(だった)ことこそが、強い信念を維持し、スコトマを強化している危険が常にあります。

 

このことはコーチにとって、常に注意して意識しておく必要があることです。

コーチは、いきなりコーチになったわけでもなく、それまでに仕事も含め様々な経験をし、その経験に基づく知識も持っています(経験自体も知識ですが)。

また、コーチは通常、何かを兼業しているので、同時に他の役割を社会に果たしています。

コーチが、コーチング以外の全く別の分野の仕事をしていることは何ら問題ありません。

実際、私も沢山の役割を持っています。

でも、その知識を持ちだして、クライアントをコーチングすることは非常に危険です。

それはクランアントの未来の可能性を狭めるリスクがあるからです。

専門家でさえ、未来は言い当てられないものです。

例えば、経済の専門家と呼ばれる人達が、1年後の為替市場がどうなっているかを言い当てることができていないことを見れば分かるでしょう。予想はしていますが、専門家によっても全く正反対の状況を予想していることもありますし、もし当たればラッキー、そして10回中1回でも当たれば、当てた1回を自分は予想していて当てたと大声で言い続けていたりします(9回外れたことは言いません)。もちろん予想すること自体が悪いといっているわけではありません。

世の中の情報はリアルタイムに変化しており、少し前の知識や技術はあっという間に過去のものとなってしまいます。

過去に専門家だったからといって、情報を常にアップデートしていなければ、過去の経験に基づく情報は役に立たないばかりか、選択肢を狭めることに繋がります(情報をアップデートしているからといって未来が分かるわけでもありません)。

世の中は常にダイナミックに変化してるのです。今この瞬間も。

 

コーチングにおいて、コーチがクライアントのゴールを提示したり、その達成方法を具体的に教えることはありません。

それは、クライアントのスコトマを作り、未来の可能性を狭めることに繋がりかねないからです。

コーチングにおいて、コーチが教えることはマインドの使い方だけ、というのはそのような理由があります。

時には、自分の過去の体験を例に出して説明することもあるでしょう。でもその時はその体験における知識を教えているのではなく、その例を通じてマインドの使い方を教えているにすぎません。もし、過去の体験を昇華させマインドの使い方として伝えることができないのであれば過去の体験を持ち出すことはしない方が良いでしょう。

今回サービスブレーカーが消えたことは、そのようなコーチにとって大切なことをリマインドさせてくれる体験となりました。

SB

(なぜサービスブレーカーが消えたかというと、平成26年4月から「スマートメーター」という多機能型の電力量計の設置が開始され、そのスマートメーターにアンペアブレーカーの機能を内蔵してるからです。今回の工事で、従来の電力量計をスマートメーターに取り替えたようですが、屋外の目に付かない所にあるので、チラシを見るまでは分かりませんでした。いや私の信念がそれをスコトマに隠していたのだと思います)

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