未収録原稿【コラム】コーチングの歴史②現代的コーチの誕生

『マインドの教科書』の構成の都合上掲載できなかった「コラム」と「エピソード」の原稿があります。そちらを順次掲載していきたいと思います。

推敲を重ねた原稿ではないので荒削りのままですが、その「コラム」や「エピソード」の原稿を読むことで、コーチングの背景なども分かり、コーチングの本体も更に理解しやすくなるかもしれません。『マインドの教科書』と共にお読みくださればと思います。

以下に掲載するのは、その中の2つ目のコラムです。


【コラム】コーチングの歴史②現代的コーチの誕生

前のコラムで、コーチの語源は、中世のコチ村の馬車にあることをご紹介しました。馬車には、現在地から目的地(行きたい場所)に人を運ぶという機能があります。その機能の面から、コーチという用語は他の分野でも使われるようになりました。

19世紀には、オックスフォード大学で、試験に合格させるための家庭教師(チューター)を指す用語としても使用され始めました。試験合格という目的地(ゴール)に運んでいくという意味合いで使われたのでしょう。
家庭教師は、目的地(ゴール)に生徒を到達させるため、その教科の中身を教えるインストラクターやトレーナーの役割を併せ持っています。そこから、後にスポーツの世界のインストラクターやトレーナーに対してもコーチという用語が使われ始めました。

そのため、英語圏では、コーチ(coach)というのは、チューター的な意味合いのコーチと、現代的なマインドの使い方を教えるコーチの両方の意味合いが入っています。

一方、日本では、コーチとして、多くの人がイメージするのは野球のピッチングコーチとかバッティングコーチのように、それぞれの専門分野に必要とされる知識や技術を教えるチューター的な意味合いとしてでしょう。

現代的なコーチングというのは、マインドの使い方の技術ですので、コーチングを行うコーチというのは、マインドの使い方を教えるというのが役割です。

そのため、コーチが、コーチングする相手の分野については一切知識がなくてもコーチングができます。実際、コーチングの創始者のルー・タイスは、もともとはフットボールコーチでしたから、フットボールのことは詳しかったはずですが、それ以外の自分が詳しくないスポーツ競技においてもコーチングを行い成功に導きました。

例えば、米国のオリンピックの水泳チームをコーチングして大量のメダルを獲得させていますし、NHLのホッケーチームをコーチングして最下位から優勝するという奇跡的な出来事をわずか1年以内に達成させるという偉業も成し遂げています。

ルー・タイスは、自分はスケートも滑れないと言っていました。それでもNHLトップのチームのコーチングができるというのは、まさにマインドの使い方を教えるのがコーチの仕事だからです。

それぞれ相手の専門分野に必要な技術内容は教えないどころか、内容に関わらないことが望ましいとさえされます。それは、簡単にいうと、コーチの限界が選手の限界になってしまう可能性が高いからです。例えば、知識で言えば、コーチの知識の上限がクライアントの知識の上限になってしまうからです。知識はあればあるほどスコトマも生まれますから、コーチが知識を教えることは、わざわざクライアントにスコトマを作り出すことになってしまいます。

たとえ内容を知ってたとしても、内容に関わらないことが望ましいですし、コーチの役割はあくまでも、クライアント自身のゴール達成のために、そのゴール設定の方法も含めて、どのようにしてマインドを上手に使っていくかということを教えることなのです。


 

『マインドの教科書』
田島大輔著
苫米地英人監修
開拓社

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