未収録原稿【エピソード】私は成功してスコトマがあるから外して欲しい

『マインドの教科書』の構成の都合上掲載できなかった「コラム」と「エピソード」の原稿があります。そちらを順次掲載していきたいと思います。『マインドの教科書』と共にお読みくださればと思います。

以下に掲載するのは、その中の1つ目のエピソードです。


エピソード「私は成功してスコトマがあるから外して欲しい」

伝説のコーチであるルー・タイスは誰よりもスコトマの存在とその中に秘める可能性に対して深い洞察をしていた人なのだと思います。ここでスコトマとは認識できていない盲点のことです。

人は思うように事が運んでいない時や、何かに失敗した時には、その状態を打破するために、自分には何かが足りないのではないか、もっと上手くいく方法があるのではないかと自問するので、スコトマを外すチャンスが生まれやすいといえます。

一方で、人は上手くいっている時や、成功した時には、それ以外の方法があるとは考えようとしないものです。本当はもっと素晴らしい方法もあるかもしれないのですが、それなりに上手くいってしまうと無意識は満足して、それ以外の方法を探さなくなるのです。私はそれを「成功者のスコトマ」と呼んでいます。

実はスコトマは、「失敗者のスコトマ」より「成功者のスコトマ」の方が怖いのです。それはスコトマの存在に気づきにくいからです。過去に上手くいったことも、未来永劫その方法が上手くいくとは限りません。むしろ、環境の方はダイナミックにどんどん変化していっているので、過去に上手くいった方法に固執していると、環境の変化に対応できず絶滅してしまうのです。まるで恐竜のように。

ルー・タイスは、1971年に教師からビジネス界に転身し、ビデオリソースを使った新しい教育法を創出し、コーチングという分野を立ち上げ成功しました。彼の作った教育プログラムは、世界の6大陸60カ国で多様な言語に翻訳され導入されました。米国では、経済誌『フォーチュン』の企業番付であるフォーチュン500に名を連ねる代表企業の62%に導入されました。まさに大成功です。

しかし、ルー・タイスに対して、もっとすごいと感じるのはこの成功の後の話です。「自分は40年掛けて成功してきた。だからこそ自分にはスコトマがある。そしてそのスコトマは自分ではどうやって外していいのか分からない。だから、苫米地博士、私のコーチになって(私のスコトマを外して)今のプログラムを再構築し直して欲しい」と認知科学者の苫米地英人博士に依頼をしたのです。その結果できたプログラムが本書のベースとなっているTPIEというプログラムです。

成功者が「成功したからこそスコトマができ、自分ではそのスコトマの外し方が分からない」とは、普通の成功者ではなかなか気づけないものです。たとえ気づいたとしても、成功してきたからこそのプライドや自信があって、人にスコトマを外すことの依頼をするのは難しいものです。

ルー・タイスにとっては自分が成功してきたことより、これから人々がより良くなること、世界がより良くなることの方が重要だったのです。だからこそ、その手助けをするために自分の成功してきたプログラムをより良く変えていくことに躊躇はなかったのでしょう。それまでにも彼は心理学の大家などの協力を得ながらプログラムを改善し続けてきました。

コーチはクライアントのスコトマを外す存在です。でも、そのコーチ自身が自分はマインドの使い方は全部分かっている。そして、マインドを他人より上手に使えるから、他人から学ぶことも無ければ、スコトマもないと思っていたら、それこそコーチとしては失格です。

誰よりもスコトマの存在とその中に眠っている大きな可能性を確信していたからこそ、ルー・タイスは世界最高峰のトップコーチとして、多くの人を成功に導いたといえるでしょう。


 

『マインドの教科書』
田島大輔著
苫米地英人監修
開拓社

【Amazon】
https://amzn.to/2NBkku1

Leave a Comment